BIOGRAPHY
ALL TIME LOW / オール・タイム・ロウ
(左から)
ドラム:ライアン・ドーソン(Rian Dawson)
ヴォーカル/ギター:アレックス・ガスカース(Alex Gaskarth)
リード・ギター:ジャック・バラカット(Jack Barakat)
ベース:ザック・メリック(Zack Merrick)
2003年、米メリーランド州ボルチモア郊外で結成したオール・タイム・ロウ。彼らはそれ以後、ラジオでほとんど曲をかけてもらえないまま、グリーン・デイのようなツアー三昧のベテラン達に匹敵するほどの揺るぎなき”ライヴ(=現場)主義”精神のもと、草の根の活動を続けることで熱烈なファンを獲得。シーンで活躍する最大のポップ・パンク・バンドのひとつに成長した。インタースコープ移籍第一弾となる、今回の素晴らしいニュー・アルバム『ダーティ・ワーク』によって、彼らへの注目度は高まる一方である。同アルバムには、屈強なアンセムから、甘味のあるロック・ナンバーまでが満載。今年の夏のハウス・パーティーや爽快なドライヴの友として、中心的な役割を果たすのは間違いない。それは、ヴォーカル/ギターのアレックス・ガスカース(Alex Gaskarth)が、「今夜は踊りたい気分 - パーティーするんだ、それこそが市民の権利だって感じで」と、歌詞で約束している通り。本作は、オルタナティヴ・プレス誌が『2011年、最も期待される音楽』特集号でオール・タイム・ロウを表紙に起用したことからも分かるように、今年最も待望されているアルバムのうちの1枚である。 「色んな意味で、今度のアルバムは、夏のアルバムとしてパーフェクトな作品なんだ」と、この4作目について語るのは、ドラマーのライアン・ドーソン(Rian Dawson)だ。「ここに収録されてる曲はものすごくラウドだから、車のウィンドウを下げないといけなくなるかもね。全編、とにかく楽しめる作品なんだよ」。 『ダーティ・ワーク』の制作に当たり、オール・タイム・ロウのメンバー4人、つまりアレックスとライアン・ドーソンに、リード・ギター担当のジャック・バラカット(Jack Barakat)、ベース担当のザック・メリック(Zack Merrick)を加えた4人は、ロック界で最も引っ張りだこのプロデューサー/スタジオ・ワークの第一人者達の何人かとチームを組んだ。その中には、マイク・グリーン(パラモア、ボーイズ・ライク・ガールズ)や、ブッチ・ウォーカー(ピンク、ダッシュボード・コンフェッショナル)らが含まれている。その結果生まれたのが、激烈な「タイム・ボム」や、スウェーデンのインディ・ロック・グループ、ザ・サウンズ(The Sounds)の歌姫マーヤ・イヴァーソン(Maja Ivarsson)がゲスト参加している「ガッツ」など、彼らにとってこれまでで最も大胆かつ自信に満ちた曲の数々だ。 またオール・タイム・ロウは、ポップ・ロック・アンセムの達人 -つまりウィーザーのリヴァース・クオモ - に共作の話を持ちかけ、一緒に「アイ・フィール・ライク・ダンシン」を書き上げた。この曲は、南カリフォルニアにあるリヴァースの自宅で、アレックスが彼と一緒に書いたものだ。「僕らはあなたとコラボしたいんですが、って、ダメ元で声をかけてみたんだ」と、23歳のアレックスが語る。「でも、彼もそのアイディアにすごく乗り気になってくれてね。ホントに素晴らしい体験だったよ。僕は彼の家に行って、床の上に座ってリラックスして。そしてお互いの好きなバンドについて語り合ったりしてたんだ。確かあの曲は、その一時間後に生まれたと思う」。 『ダーティ・ワーク』には楽しい時を過ごしている雰囲気が漂っているが、実はオール・タイム・ロウは、このアルバムを完成させるまでに2年の歳月を費やしており、へとへとになるまで消耗し切っていた。その間、わずかな休息を挟んだだけで、ノンストップでツアーを敢行(そこには、2007年のワープト・ツアーでのトリや、2010年のバンブーズル・フェス、そして彼らの憧れのヒーローであるblink 182と同じ舞台に立った様々なフェスへの出演などが含まれる)。アルバム・セッションの大部分は、ロサンゼルスでマイク・グリーンと仕上げたが、自由の利くスケジュールのおかげで、バンドのソングライティングへの意欲は増す一方だった。「ツアーを途中で中断するのって、僕らはイヤなんだ」とアレックス。「外界を遮断してスタジオの中にこもっているより、常にあちこち飛び回って、環境を変え続けていたい。それによって、みんなリフレッシュできるし、新しい息吹を曲に吹き込めるようになるんだよ」。 オール・タイム・ロウが受けてきた影響の源は、同世代のバンドに比べるとはるかに多彩で、クラシックなパンクやロックに対する彼らの愛が、『ダーティ・ワーク』の隅々から聴いて取れるはずだ。「ジャスト・ザ・ウェイ・アイム・ノット」は、スタジアム・ロックの大御所、デフ・レパードへのオマージュで、このUKバンドのドラム・サウンドを彼らはここでサンプリングすらしている。一方、「ドュ・ユー・ウォント・ミー(デッド?)」のようなナンバーでは、キャッチーの極致にある時のザ・クラッシュのようなアイコン達と、アレックスはチャネリング(=霊的なコミュニケーション)を行っているのだ。「今回のアルバムの数曲で、彼らは極めて重要な役割を果たしてくれたんだ」とアレックス。「あらゆるルールをああいった形でブチ破った彼らを、僕は心から尊敬してた。彼らのおかげで、自分達のサウンドをギアチェンジしてもいいんだってこと、そして自分を抑えるのを怖れる必要はないってことに気づかせてもらえたんだ」。 しかし、作詞の上でアレックスに影響を与えたものの中で最も驚いたのは、エラ・フィッツジェラルドの「イッツ・オンリー・ア・ペーパー・ムーン(原題:It’s Only A Paper Moon)」に影響された「Under A Paper Moon」だ。これはオール・タイム・ロウの幅広い音楽嗜好の証拠であると同時に、作詞家としてアレックスがどれほど成長したかの証明となっている。「これは僕が一番気に入ってる曲のひとつなんだ」とアレックス。「僕らは、”blinlk 182を聴いて育ったバンド”っていうカテゴリーにおさめられてるだろ。でもこの曲は、ポップ・パンクというカテゴリーを超越した所に僕らを押し上げているんだよ」。 高校生の時、blink 182のカヴァー・バンドとして米メリーランド州ボルチモアで結成して以来、オール・タイム・ロウは大きな進歩を遂げてきた。高校在学中に、2枚の爆音声明書 ― 2004年のEP『The Three Words To Remember In Dealing With The End』と、2005年のフル・アルバム『The Party Scene』 ― を発表した彼らは、2006年にインディの名門、ホープレス・レコード(Hopeless Records)と契約。しかし、すべての扉が大きく開け放たれたのは、2007年に『So Wrong, It’s Right』をリリースした時である。オール・タイム・ロウにとって3作目となる、2009年リリースのアルバム『Nothing Personal』は、さらなる健闘を果たし、ビルボード・チャートに初登場4位。オルタナティヴ・プレス誌やワシントン・ポスト紙といった広範囲に及ぶメディアから、好意的なレビューを獲得した。 このような成功を収めたオール・タイム・ロウだが、彼らは常に慢心しないようにと努力し続けている。彼らのツアー・スタッフには、バンドがレクター・シアターのようなメリーランド州の小さなクラブでプレイしていた初期の頃から、一緒にツアーしてきた仲間も含まれているのだ。「確かに望みさえすれば、アクセル・ローズのサウンド担当を雇うことだって可能だよ。でもそんなことをしたら、ツアー中はずっと、そういった見知らぬ人と一緒に過ごすことになるわけだよね」とライアン。「友達に囲まれてた方が、そんなのよりずっと楽しいし、いけすかないロック・スター野郎みたいなものにならないように気をつけられるしね」。 それでも、オール・タイム・ロウには、バックステージでどんちゃん騒ぎをする時間はたっぷりあるようだ ― たとえば、先日のニュー・ジャージー公演では、彼らのツアー・バスが大盛り上がりのパーティー会場へと変貌した。「初めて会ったような人達が大勢いたよ」と、ライアンがその時のことを笑いながら回想する。「ステレオがものすごい大音量で鳴ってて、何かが焦げたようなニオイがしてたっけ……でも、そういうのって、バンドをやる醍醐味のひとつなんだよね。友達に囲まれて過ごすのは、永遠に終わらない休暇を取ってるみたいなものなんだ」。