Press Release
TikTokとの契約に関するお知らせ
ユニバーサル ミュージック グループ(UMG)の公式ホームページで発表された(*注1)通り、2024年1月31日を期限としていたUMGとTikTokの契約については、更新の合意に至ることができませんでした。
契約更新の交渉過程を通じて、UMGは以下3つの重要な課題:
・アーティストとソングライターへの適切な報酬
・AIの有害な影響からの人間のアーティストを守ること
・TikTokユーザーのオンライン上の安全性
に対処するようTikTokに提案してまいりましたが、TikTokはこれに無関心、或いは威圧的な態度で応じました。
UMGはこうしたTikTokの姿勢が引き起こす問題を、これ以上看過するわけにはいかないと考えています。
契約が合意に至らなかったことに伴い、ファンの皆様にはTikTok上でUMGの管理楽曲(*注2)を利用した動画の作成や視聴に影響が出る形となり、ご迷惑・ご不便をおかけしておりますことをお詫び申し上げます。
UMGとして、このたびの判断はアーティストの権利・創造性・価値を守るために不可欠なものと認識しており、皆様のご理解をいただけますと幸いです。
今後状況が変化することがございましたら、当社ホームページ等で随時ご案内いたします。皆様には引き続き、UMGのアーティスト・作品へのご支援をよろしくお願いいたします。
(*注1) UMGの発表の日本語訳を以下に掲載します
アーティストとソングライターのコミュニティへの公開書簡
「なぜ私たちはTikTokに終止符を打たなければならないのか」
私たちの基本的な使命はシンプルです。それはアーティストとソングライターが創造的かつ商業的な可能性を最大限に発揮できるよう支援することであり、この目標の実現のため、私たちのチームは専門知識と情熱を注ぎ込み、世界中のパートナーと取引を行っています。パートナーの皆さんもアーティストとソングライターに公正な報酬を支払い、ユーザー体験を尊重してくださっています。
TikTokは、強力な技術力と世界中の膨大なユーザーベースによって影響力を増しているプラットフォームです。私たちが提携する他の多くのプラットフォームと同様に、世界最大のソーシャル・プラットフォームの1つであるTikTokの成功の大部分は、私たちのアーティストとソングライターが創りだした作品が担ってきました。同社の経営幹部が、自慢げに「音楽はTikTokの体験の中心にある」と公言している通り、私たちの分析でもTikTok上のコンテンツの大半は音楽を含んでおり、他のどの主要ソーシャル・プラットフォームよりも多いことが分かっています。
TikTokと私たちの関係は2024年1月31日までと契約によって定められています。契約更新の話し合いの中で、私たちは3つの重要な課題、すなわち、アーティストとソングライターへの適切な報酬、AIの有害な影響から人間のアーティストを守ること、そしてTikTokユーザーのオンライン上の安全性について、TikTokに強く対応を求めてきました。
私たちは他のプラットフォーム・パートナーとともに関連する問題に取り組んできました。例えば「アーティスト・セントリック・イニシアチブ(アーティスト中心型モデル)」は、ストリーミングの報酬モデルをアップデートし、アーティストがプラットフォームに提供する価値により良い報酬を還元することを目的としています。開始から数ヶ月で、この取り組みが世界最大の音楽プラットフォームを含む様々なパートナーに採用されたことを改めて誇りに思います。
また、AIの前向きな可能性を取り入れながら、アーティストの権利と利益が現在そして将来にわたって確実に保護されるよう積極的に取り組んできました。さらに、多くのプラットフォーム・パートナーとともにオンライン上の安全性の問題に対処し、ユーザー、さらにアーティストにもポジティブな変化をもたらすよう働きかけており、健康とウェルネスへの音楽の広範な作用に着目する業界のリーダーとして認められています。
アーティストとソングライターの報酬の問題に関して、TikTokは私たちのアーティストとソングライターに他の大手ソーシャル・プラットフォームが支払う報酬の数分の一のレートの支払いを提案してきました。現在、アーティストやソングライターにTikTokから支払われる報酬がいかに少ないかを示すものとして、TikTokの膨大なユーザー数や広告収入の急増、音楽を活用したコンテンツへの依存度が高まっているにもかかわらず、私たちの総収入のわずか1%程度に過ぎないのです。
つまり、TikTokは音楽に正当な対価を支払うことなく、音楽をベースにしたビジネスを構築しようとしているのです。
AIに関しては、TikTokはAIが作成した音源でプラットフォームが溢れることを容認し、プラットフォーム自体でもAIによる音楽制作を可能にし、促進・奨励するツールを開発しています。そしてこのコンテンツが人間のアーティスト向けの印税を大幅に縮小できる契約上の権利を要求しており、これはAlによるアーティストの置き換えを支援する動きにほかなりません。
さらにプラットフォーム上の私たちのアーティストの音楽を侵害する膨大な量のコンテンツに対処する努力をほとんどしておらず、押し寄せるヘイトスピーチ、偏見、いじめ、嫌がらせのみならず、コンテンツに関連する問題に対しても意味のある解決策を提示していません。権利侵害や問題のあるコンテンツ(アーティストのポルノ的なディープフェイクなど)の削除を求めるために利用できる唯一の手段は、デジタル版の「モグラたたき」のような極めて煩雑で非効率的なプロセスのみなのです。
私たちがTikTokに他のプラットフォーム・パートナーと同様の手順でこれらの問題に対処するよう提案したところ、TikTokはまず無関心でそして次に威圧的な態度で応じました。
交渉が続く中、TikTokは私たちに対して公正な市場価値よりもはるかに低い、彼らの急成長を反映しない取引を受け入れさせようとしました。どのように私たちを威嚇しようとしたのでしょうか?それはキャリア途上にあるアーティストの楽曲を選択的に削除する一方、視聴者を引き寄せる世界的スターの楽曲をプラットフォームに残すことで、私たちを脅そうとしたのです。
TikTokの手口は明らかです。プラットフォームの力を使い、弱い立場のアーティストを傷つけ、音楽の価値を過小評価し、アーティストやソングライター、そしてファンを軽視するような悪い取引に譲歩するよう仕向けているのです。
私たちは、決してそのようなことはしません。
私たちはこれからもアーティストとソングライターのために戦い、音楽の創造的・商業的価値のために立ち上がります。
私たちは、TikTokの行動が引き起こす問題を認識しています。残念ながらTikTokが相場に相応しい契約を結ぼうとせず、ソーシャル・プラットフォームとしての義務に意味のある対処をしないことによって、私たちのアーティストとそのファンが受ける短期的な影響について軽んじることはありません。私たちはアーティストに対し人間の創造性を尊重し、すべての人にとって安全で、適切に管理された環境下で、作品に対して適切な報酬が支払われる新たな契約のために闘うという重大な責任があります。
私たちは、最大限の真摯さで私たちの責任を果たします。威嚇や脅しによって、私たちがその責任を放棄することは決してありません。
原文:ユニバーサル ミュージックグループ公開書簡 (英文)
(*注2) ユニバーサル ミュージック合同会社の管理楽曲を含みます