KISSとトム・モレロの「ロックの殿堂」スピーチ全和訳掲載!

2014.06.09 TOPICS

今年の4月10日にニューヨークで行われたロックの殿堂入り式典。
デビュー40周年を迎えたKISSが今年受賞しましたが、そのプレゼンターのトム・モレロ(Rage Against The Machine)とメンバー4人の名スピーチの日本語訳を全文掲載いたします。


トム・モレロ:
こんばんは、トム・モレロです。
彼らは地球上でもっとも顔を知られた4人で、最も偶像的で、いつでも最高のバンドでした。そんな彼らが今夜、ロックの殿堂入りを果たします。
KISSは私の大好きなバンドでしたが、KISSファンになるのは簡単なことではありませんでした。KISSは評論家によってコテンパンにされていましたし、KISSのファンはアメリカの中学校、高校に通っている時も友達からバカにされ続けてきました。口げんかを吹っかけられたり、時には殴られるようなことも日常茶飯事でした。私は、15歳のいじめっ子の少年がこう言っていたのを思い出します。「お前は俺のケツにでもキスしてな!」って。KISSはいつも評論家からはバカにされ続けていましたが、KISSは評論家のためのバンドではなく、ファンのためのバンドでした。
シカゴの凍える朝、人生で初めてのコンサートのために、KISSのライヴ・チケットを買う長い長い行例に並んでいました。ようやく買えたそのチケットには、そのライヴが特別なものになるというヒントが書いており、私は本当に興奮していました。チケットに書かれていたのは、「KISSの一部分の面」(”A partial view of Kiss”)です。これはバンドがアーティスティックな試みだったり、新しい秘密が見られるという意味だと確信していました。本当は私の席は大きなポールの後ろという意味だったんですが(会場:笑)。でもその日、私が体験した2時間のライヴは、とってもエキサイティングで、興奮するもので、音が大きくて、とてもスリリング時間でした。
ロックの殿堂に入るか入らないか、よく議論になることがありますが、私が思うに、その判断基準はとっても簡単です。「インパクト」、「影響力」、そして「最高なこと」です。KISSは紛れもなく、この要素を持っているバンドです。
「インパクト」? KISSは世界中で1億万枚以上のアルバムを売り上げています。彼らはアメリカだけでも28枚のゴールド・アルバムを持っており、これはアメリカのロック・バンドの歴史上、どんなバンドよりも多い数です。外見をシアトリカルにしたのは、彼らの発明です。しかし、私は、KISSの音楽そのものにインパクトを受けたのです。彼ら4人は、最高に偉大な楽曲を残しました。彼ら4人は、それぞれが最高に偉大なシンガーでもあります。彼らは『ALIVE!』という、最高のライヴ・アルバムをリリースし、『Destroyer』, 『Rock and Roll Over』, 『Love Gun』, 『Alive II』, 『Dynasty』といったアルバムを続けて発売し、どのアルバムも魅力的なリフがあり、アンセム的なサビがあり、叫ぶようなソロがあります。 この40年間、世界中のアリーナやスタジアムはその楽曲の数々で湧き上がっているんです。
「影響力」? 単純に言うと、KISSは、私や他にいる何百万のものファンに、ロックを愛することを教えてくれました。エルヴィス・プレスリーとビートルズがKISSに影響を与えたように、KISSは我々に影響を与えたんです。彼らは、何百万もの若者の手に楽器をとらせました。彼らの影響はいたるところにあります。メタリカからレディー・ガガまで。KISSはジャンルを超えた何千ものアーティストにも影響を与え続けているんです。その中には既にロックの殿堂入りしている人たちもいます。
彼らの影響は数えるだけでもTool、Pearl Jam、Alice In Chains、Slipknot、Garth Brooks、Pantera、 Foo Fighters、Motley Crue、Lenny Kravitz、White Zombie、Soundgarden、Nine Inch Nailsといったバンドたち、そしてもちろんRage Against The Machineにも与えています。
「インパクト」はクリア、「影響力」もクリア。最後の判断基準は、「最高なこと(Awesomeness)」でしたね。最高なことがわかる簡単なテストがあります。みなさんが今までにKISSを聞いたことがない、見たことがない、KISSのメンバーをフィーチャーしたテレビ番組を見たことがないとしましょう。そんな人が、男が火を吹き、途方もなく長い舌で血を振りまき、ドラム台が天井まであがり、ギター・プレイヤーのギターからロケットを発射して、フロントマンはターザンかスーパーヒーローになったように空中を飛びまわり、そのバンドの全員が、ホラー映画やコミックに出てくるスーパースターのような、セクシーな歌舞伎のようなメイクをしているんです。4人全員が黒と銀の戦士のようなボンテージを来て、18cmものヒールのブーツを履いている。彼らが演奏するステージでは、爆発が起こり、サイレンが鳴り響き、紙ふぶきが舞い、無秩序でヘヴィで汚くて文字通り洒脱なロックン・ロールのサウンドトラック要素に満ちています。そんなバンドを見たときに、あなたはこう言うでしょう。「このバンドは、マジで最高じゃねぇか! ロックの殿堂に入るに決まってるぜ!」
エリック・カー、ヴィニー・ヴィンセント、マーク・セント・ジョン、ブルース・キューリック、エリック・シンガー、トミー・セイヤー。KISSの伝説がここまで広がるには、彼ら全員が重要なんです。彼らは称賛を得るべき存在なんです。
しかし、今夜は、私たちが祝福するのは、4人のオリジナル・メンバーです。The Demonことジーン・シモンズ。彼は雷神でもあり、Dr Loveでもあり、バンドを支え、ベラ・ルゴシが演じたドラキュラのコウモリでもあります。
The Starchildことポール・スタンレー。彼はKISSというサーカスの団長であり、彼のヴィジョンや才能が、この40年間KISSを今まで引っ張ってきました。
The Space Manことエース・フレーリー。彼は、私の最初のギター・ヒーローです。バンドの特徴的なロゴをデザインし、忘れることのできない時を超えて輝くサウンドをレコードに入れ込んでくれました。
The Catことピーター・クリス。彼は、ジャングル・ドラムやジャズ・フィルを使いこなし、そしてバンド最高のヒット曲であり、世界で初めてのパワー・バラードの名曲「ベス」を作って歌った人物です。
今夜、我々は、バンドの5番目のメンバーも讃えます。彼らがいなければ、何も起きなかったでしょう。それはThe Kiss Armyです。彼らは猛烈であり、バンドに忠誠的であり、世界中で今夜を辛抱強く、待ち続け、祝福しているファンの皆さんです。
高校でのいじめっ子や評論家たちが間違いだったということが、まぎれもなく今夜証明されます。我々、KISSのファンは、正しかったんです! さぁ祝福しましょう!
私は、さっき「KISSがロックの殿堂入りをした」と間違ったスピーチをしてしまいました。ほとんどあってますが、違っています。なぜなら、今夜は、「Rock and Roll Hall of Fame」ではありません、今夜は「Rock and Roll All Night And Party Every Day Hall of Fame」です!
それでは、ご紹介します、ジーン・シモンズ、ポール・スタンレー、エース・フレーリー、ピーター・クリス、You wanted the best and you got the best, the hottest band in the world、Kiss!


ジーン・シモンズ:
Lemme hear ya! トム・モレロ、俺たちはいつも低評価だったが、ステージ上がって、俺たちが好きなことをやってきたよ。これは、俺たち全員、心から誇れる時間だった。俺たちは、クソみそに言われていたけど、ファンが俺たちにチャンスをくれたんだ。俺は、40年前に一緒に集まってバンドをやることを決めた、4人のバカ野郎たちに、優しい言葉をかけてやりたいよ。そして評論家たちは地獄に落ちるべきだな。
エース。彼の独特なギター・プレイは世界中のプレイヤーたちからマネされ続けてきたけど、誰も完全にコピーできた奴なんていなかったよ。
ピーター。ドラムを叩いて歌って、ピーターのようにできる奴なんてどこにもいないぜ。誰もあのスタイルでスイングなんてできないよ。
40年前に何かが起こったんだ。俺は、パートナーであり、兄弟でもある奴に出会ったんだ。彼の名はポール・スタンレー。同じチームでポール以上に最高になれることなんてできないぜ。
エリック・カー、マーク・セント・ジョン、ヴィニー・ヴィンセント、ブルース・キューリック、そしてこの40年間の後半を一緒に過ごしているエリック・シンガー、トミー・セイヤーや、他のたくさんの人たちにお礼を言いたい、そして俺たちはまだまだ続けるぜ!
しかし俺たちは、最初のファンタスティック・フォーがいなかったらここにはいない! みなさんに祝福を。さぁパワフルで魅力的なやつを紹介させてくれ、ピーター・クリス!


ピーター・クリス:
ありがとう。僕はここ、故郷であるブルックリンにいられて幸せです。
ロックの殿堂に感謝を述べます。こんなことが自分の人生で起きるなんて想像できませんでした。僕やバンドのキャリアを支えてくれた人たちに感謝を申し上げます。僕個人は50年、そしてバンドは40年やってきました。
裏方や、ツアー・トラックの運転手、プロデューサー、マネージャー、どんな時でも何年も支えてくれたファンのみなさん、神の祝福を。本当に感謝しています。最初のマネージャーのビル・オーコインにも感謝を述べたいです。私たちは彼がいなければ、この日を迎えることはできませんでした。
それにカサブランカ・レコーズのショーン・デラニー、ジョイス・ボガート、ニール・ボガート、楽しい時を過ごした彼らにもお礼を述べます。そしてもちろん、バンドのみんな、ミスター・スタンレー、ミスター・シモンズ、そして唯一無二のスペースマン、エース・フレーリーにも。
僕は、男性乳がんで7年間闘病していました。僕は、サポートセンターや、主治医といった僕の命を救ってくれた人たちに本当に感謝しています。
そして、僕の家族、妹のドナ、今までに出会ってすべての友人、そして神にも。
そして僕の人生を豊かにしてくれた、愛するワイフのジジ。彼女と一緒に人生を歩むことは本当にありがたいことです。愛しています。
そして親友で初めてドラム・レッスンをしてくれたニューヨーク・ドールズのジェリー・ノーラン、あそこから全てが始まったんです。メイクがなくても、僕はいつでもthe Catmanです。今夜のことは永遠に忘れることはありません。本当にありがとうございます!


エース・フレーリー:
今からスピーチをするんだけど、このサングラスには度が入っていないから読めないね(笑)、セレブリティのみなさんと、他のミュージシャンのみんなとここにいられることが最高です。
ポール、ジーン、ピーターに感謝を述べます。トム(・モレロ)、素敵なスピーチをありがとう。俺たちを入れてくれたロックの殿堂にも本当に感謝しています。
13歳の時、俺は初めてギターを手にして、何かしらビッグになりたいといつも思っていたよ。その時は数年後にサマー・オブ・ラヴを体験したんだけど。その時はまだこの道化達とは会う前だったよ。その数年後、俺たちが出会って、ストーリーが始まった、そうKISSTORYがね。
数人名前をあげるよ。ビル・オーコイン、ジョイス・ビアウィッツ。彼らは、ニール・ボガートと結婚することになるビルと一緒に俺たちのマネージャーをしてくれました。
俺たちはニール・ボガートとカサブランカ・レコードなしには今日この日を迎えることができなかったよ。カサブランカ・レコーズのみんな、ATIのジェフとワーリー、プレス・オフィスのキャロルとアル・ロス、キャロル・ケイン、これは一部です。もし、今までのキャリアの中で俺を助けてくれる人の名前を全員上げると、あと1時間半ぐらいここでスピーチしなくちゃならないよ。ここにいられるのは本当に光栄なことだ。
7年半ずっとシラフでいられていることにも触れたい。この国の人たちにシラフでいることの大切さについて、もっと伝えていく必要があると思っている。なぜなら、「シラフでいられない奴は意志が弱いからだ」と思っている人がいるからだ。しかし、不幸なことに、ほとんどの中毒は生まれついてのもので、そのことを教えないといけないんだ。俺のスポンサーは、こんなことを言っていた。中毒患者になるには何故かという話になった時に、「意思の弱さ」を持ち出す人がいる、「お前が下痢してるときにでも、意思の力をみせてみろよ」ってね。
神の恩恵のおかげで、俺がここにいられる。最初の妻、ジェネット、娘、今のフィアンセのレイチェル・ゴードンに感謝を述べたい。本当にこれまでいい人生だった、あと10年、20年、できるかぎりやってきたいよ。本当にありがとう。

ポール・スタンレー:
俺のスピーチは短くするよ、だってみんなが全部言っちゃったし、俺が話すことなんかより、どれも面白かったしね。
トム(・モレロ)、ありがとう。彼は恥知らずで向こう見ずな俺たちをずっと擁護してくれていた。それはマジで根性がいることだよ。トムに神のご加護を。俺たちにとって今夜は特別な夜だ。そして俺たちのファンにとって本当に特別な夜なんだ。彼らが正しいと証明されたんだから。本当に、彼らなしでは俺たちはこんな舞台に立てることはなかったよ。
ピーター、エース、ジーン、俺たちはオリジナルのメンバーだ。俺たちが一緒にバンドを始めなければ、こんなことは起きなかった。俺たち4人がやったことは、このバンドの基礎を作ったことだ。俺たちは遺産を作ったんだよ。その後、ブルースがきて、トミーがきて、エリックがきて。
初めて音楽を聴き始めた時、俺は本当に幸せものだった。敬愛するミュージシャンのライヴを何人も見ることができた。ガキのころ、ソロモン・バークやオーティス・レディングを見たし、ヤードバーズも見に行った。レッド・ツェッペリン、ジミ・ヘンドリックス、スライ&ザ・ファミリー・ストーンも見たし、他にも色々なミュージシャンのプレイを見たんだ。
彼らについて尊敬しているのは、彼らがロックン・ロールのスピリットを持っていたということだ。俺はロックン・ロールのスピリットを信じている。評論家の言うことや、周りの奴が言ったことには振り回されず、自分の信じる道をいくんだ。俺たちはこれを40年間続けてきたんだよ。
今夜、俺たちがここにいること、それは基本的に、俺たちが避けられていたことと同じ理由なんだよ。俺は、ロックの殿堂に向かって話しかけてるんだ。俺たちがずっと言っていることっていうのは、「もっと殿堂入りを!」ということだ。殿堂入りに見合う人はもっといるんだ。ノミネーションされたい奴はもっといるんだよ。ほんの一握りの人によって決められなくはないんだ。ライヴのチケットを買ってくれる人がいる。アルバムを買ってくれる人がいる。でも、ロックの殿堂のノミネーションを決めるひとは、チケットもアルバムも買わないんだよ。忘れてはいけない、みんなで変えようと思えば何事もできるってことを。
ここからの、みんなを見ている。何年も俺に影響を与えてくれた人たちの顔が見える、俺を俺にしてくれた人の顔が。今夜ここにいられるのは、俺に影響を与えてくれる人や、逆に俺が影響を与えた人がいるからだよ。神の祝福を。本当に最高の夜だぜ!