9月にザ・ルーツとのコラボ・アルバム『ワイズ・アップ・ゴースト』をリリースするエルヴィス・コステロに、ロンドンで新作について話を聞いた。
音楽ファンをワクワクさせるコラボだが、ヒップホップ・グループというジャンルも違えば世代も違うアーティストと組むことに難しい点はなかったのだろうか。コステロはこう答えた。
「僕がもはやニューウェーブのアーティストじゃないのと同じくらい、彼らのこともヒップホップ・アーティストとは分類できない。僕らは、どんな音楽に対しても耳も心もオープンにしてる。ザ・ルーツ、とくにクエスト(ラヴ)はどの音楽にもオープンで、音楽の歴史にものすごく詳しいんだ。彼はタイムトラベラーみたいなんだよ。時代を遡って、当時の素晴らしい音楽を持ってくる」「大変だと思ったことはなかった。ワクワクしてた。すごく楽しかったよ。意見が食い違っても、いつも最良の方法を見つけることができた。フラストレーションなんて全く感じなかった」
当初、アルバムを作ることまで考えていなかったそうだ。しかし、音楽に対してオープンで、新しいことに挑戦してみようという共通点があるところでその違いがぶつかり合ったとき、魔法が起きたのだと語る。そして、それを上手くまとめたのが共プロデューサーのスティーヴ・マンデルだったという。
「彼が一番、スタジオにいたな。彼やクエストからたくさんのアイディアで出て、それに素晴らしいザ・ルーツのメンバー、彼らの友人のレイ・アングリー、ピノ・パラディーノ、僕の友人であるラ・サンタ・セシリアのラ・マリソウル、ダイアン・バーチが加わった。最後の最後のところでクエストがブレント・フィッシャーにオーケストラの部分を書いてもらいたいって言い出して、素晴らしいオーケストラも加わった。たくさんのエレメントがある。スティーヴンがその中心にいて、すべての要素をバランスよくまとめてくれたんだ。だから、彼に(手を叩きながら)拍手喝采だよ」 レコーディングはドラムとヴォーカルからスタートし、それをもとに少しずつ他のパートが加わっていくという、コステロの従来のスタイルとは違う方法が取られたそうだ。 また、歌詞の面でも新しい試みをしている。昔の曲の歌詞をリワークしたそうだ。 |
コステロはこの日、アルバムのリスニング・イベントに出席。試聴後行なわれたQ&Aにだけ登場したのではなく、1時間におよぶアルバムのプレイバック時も同席。ジャーナリストの反応が気になるというより、純粋にこの作品を聴きくのを楽しんでいるように見えた。彼のお気に入りであり自信作なのは間違いない。
(文: Ako Suzuki)