エルヴィス・コステロ インタビュー(2013年7月中旬ロンドンにて)

9月にザ・ルーツとのコラボ・アルバム『ワイズ・アップ・ゴースト』をリリースするエルヴィス・コステロに、ロンドンで新作について話を聞いた。

Costello201307 Interview

音楽ファンをワクワクさせるコラボだが、ヒップホップ・グループというジャンルも違えば世代も違うアーティストと組むことに難しい点はなかったのだろうか。コステロはこう答えた。
「僕がもはやニューウェーブのアーティストじゃないのと同じくらい、彼らのこともヒップホップ・アーティストとは分類できない。僕らは、どんな音楽に対しても耳も心もオープンにしてる。ザ・ルーツ、とくにクエスト(ラヴ)はどの音楽にもオープンで、音楽の歴史にものすごく詳しいんだ。彼はタイムトラベラーみたいなんだよ。時代を遡って、当時の素晴らしい音楽を持ってくる」「大変だと思ったことはなかった。ワクワクしてた。すごく楽しかったよ。意見が食い違っても、いつも最良の方法を見つけることができた。フラストレーションなんて全く感じなかった」

当初、アルバムを作ることまで考えていなかったそうだ。しかし、音楽に対してオープンで、新しいことに挑戦してみようという共通点があるところでその違いがぶつかり合ったとき、魔法が起きたのだと語る。そして、それを上手くまとめたのが共プロデューサーのスティーヴ・マンデルだったという。

「彼が一番、スタジオにいたな。彼やクエストからたくさんのアイディアで出て、それに素晴らしいザ・ルーツのメンバー、彼らの友人のレイ・アングリー、ピノ・パラディーノ、僕の友人であるラ・サンタ・セシリアのラ・マリソウル、ダイアン・バーチが加わった。最後の最後のところでクエストがブレント・フィッシャーにオーケストラの部分を書いてもらいたいって言い出して、素晴らしいオーケストラも加わった。たくさんのエレメントがある。スティーヴンがその中心にいて、すべての要素をバランスよくまとめてくれたんだ。だから、彼に(手を叩きながら)拍手喝采だよ」

レコーディングはドラムとヴォーカルからスタートし、それをもとに少しずつ他のパートが加わっていくという、コステロの従来のスタイルとは違う方法が取られたそうだ。
「僕はバンドとスタジオでプレイすることに慣れてるけど、今回、そうしたのは2,3曲だけだった。そのほかは、1回に1つの楽器だった。ドラム、ヴォーカル、ヴォーカル・アレンジメント、ピアノ、ベースって感じで」「毎日、ミックスしていくような過程で進んで行った」という。

また、歌詞の面でも新しい試みをしている。昔の曲の歌詞をリワークしたそうだ。
「昔の曲のアイディアと新しい歌詞を組み合わせてみたかったんだ」「いくつかの曲でこのコラージュ方法を使ってみた。昔書いた曲は、当時の恐れそのものだった。(時が経て)それが現実になったとは言わないけど、僕にとってより心をかき乱すものになっている。まだ当時から続いているものがあるんだから」しかし、「かなりダークな曲をやってるときでさえ、僕らの間にはユーモアがあった。世の中の暗いテーマを扱っているときでも、レコーディングしてる僕らの雰囲気は明るかった」と言い、「ユーモアに満ち、希望のあるアルバム」が出来上がったという。

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コステロはこの日、アルバムのリスニング・イベントに出席。試聴後行なわれたQ&Aにだけ登場したのではなく、1時間におよぶアルバムのプレイバック時も同席。ジャーナリストの反応が気になるというより、純粋にこの作品を聴きくのを楽しんでいるように見えた。彼のお気に入りであり自信作なのは間違いない。

(文: Ako Suzuki)